「パウロの弁明」

加藤 智恵 牧師   使徒言行録 24章10~21節

 

 アジア州からパウロを追って来たユダヤ人が、神殿の境内でパウロを見つけ、全群衆を扇動し、「イスラエルの人達、手伝ってくれ。この男は民と律法と神殿を無視することを、至る所で誰にでも教えている。その上ギリシャ人を境内に連れ込んで、この聖なる場所を汚してしまった。」と言ったので、群衆から敵意を持たれる結果となりました。そこにはローマ軍の歩兵が1000人ほど駐屯していました。ローマ軍の介入によって、群衆のパウロへのリンチは納まりました。パウロはローマの指揮官に荒れ狂っている民衆に、一言お話ししてよいでしょうか、と依頼しました。ここからパウロの弁明が始まります。パウロの弁明はダマスコ途上で主イエス・キリストに出会い、キリストを迫害する者から主イエス・キリストを宣べ伝える者とされた、回心の内容でした。群衆はパウロの弁明に耐えられなくなって、「こんな男は殺してしまえ」とわめき立てました。パウロは親からローマの市民権を相続していました。ローマの市民権を持つ者の特権は大変なものであり、パウロを取り調べようとしていた者たちは、ただちに手を引きました。そこで群衆は解散せざるを得ませんでした。

 次に民衆への弁明から、最高法院での弁明に移ります。議員は大きく二派に分かれました。復活を認めないサドカイ派と復活も天使も霊も認めているファリサイ派でした。そこでパウロは「兄弟たち、私は生まれながらのファリサイ派です。死者が復活するという望みを抱いていることで、裁判にかけられているのです。」と議場で言いました。そのためにサドカイ派とファリサイ派との間で論争になり、議場は大混乱に陥りました。議会を開く状況では無くなりました。その夜、主はパウロの傍に立って言われました。「勇気を出せ。エルサレムで私のことを強く証ししたように、ローマでも証しをしなければならない」と。パウロは主の声を聞き、自分はローマに遣わされるいう使命が与えられていることをはっきりと知ることが出来ました。主はパウロに今の苦しみは、ローマへ行くためのものだと知らせて下さったのです。

 最高法院での裁判が大混乱に陥り、無効になり、パウロはローマ総督フェリクスの許に護送されました。最高法院の大祭司アナニアは長老数人と弁護士テルティロを連れて、ローマ総督フェリクスにパウロを訴えました。パウロは弁護士テルティロの訴えに対し、弁明をします。「彼らが分派と呼ぶイエス・キリストの教えに従い、旧約聖書に書いてあることを、心から信じています。そして正しい者も正しくない者も、やがて復活するという希望を神に対して抱いています」と答弁しています。パウロはキリストの復活の証人とされました。だから、キリストの復活について宣べ伝えているのです。

 このような複雑な絡み合いの中で、主イエスはパウロの前に現れ、ローマに行って主を証ししなければならない事を告げます。ナザレのイエスは人々の罪のために十字架に掛けられ、死から復活された方である事、やがて来たりて、正しい者と不正な者とを裁かれる方である事、王の王、全能の主であり、主を信じる者は何も恐れる事は無く、永遠の命に入る事を力強く証ししなければならない使命があり、そのために主はパウロを選ばれたのです。主の選びは確かなのです。そして必ず共にいてくださり、選んだ者の目的を知らせてくださり、目的をはたさせて下さるお方なのです。

説教要旨(7月19日)